◆400年前の音楽のどんな点が魅力ですか?
モンテヴェルディの時代は、言葉と音楽が結びつくひとつの方法が確立してきた時代だと思う。それまでも器楽と歌は勿論あったけど、ルネサンスの頃から文学と音楽が合わさることが始まりだした。教会音楽はポリフォニーで言葉が聞き取りにくかったのが、モノディーによって言葉がわかるようになってきた。吟遊詩人らが言葉を繰り返し語るようになったことも関係していると思う。
それまでは音楽が「神の声」で、雰囲気を作れれば言葉ははっきりしなくて良かったのから、こんどは言葉が聞き取れるようになることを、人間が求めたんだね。
音楽がそういうふうに成熟すると、言葉って意味を持っているので、それを視覚化する人が出てくる。それがモンテヴェルディの時代にぴったり重なったんだね。
日本も一緒だよね。1600年は関が原の戦いで、戦国時代は終わって安定してくるに従って歌舞伎なんかが出てくる。ヨーロッパでは、魔術的な混沌の時代がルネサンスによって整理され落ち着いてきたときに、舞台芸術のスタートが切られた。
◆どんな演出になるでしょうか?
演出家としては、おしゃれな作品だと思う。モーツァルトもそうなんだけど、新しいことをやろうと、卵の殻を割ろうとしている作品だと思う。モンテヴェルディは、当時のアバンギャルドで、周囲にもすごい批判された。でもそこまでしても表現したいことがあったってことだよね。時代の要請でそうなった面もあると思う。
モンテヴェルディは文学的な素養があったんだと思う。だから台本を読み込んで聴覚化できたし、それと同時に視覚化もしている。楽譜には、この楽器はお客さんから見えないところで演奏しろとか指示があったり、楽器を使い分けることも書き込んである。もしかしたら聞かせながら、見せることも考えて音楽を書いた最初の作曲家かも。だからこれが最初の「オペラ」といわれるんじゃないかな。そういう意味では演出家のご先祖様みたいなところもある。
その時代の音楽を楽しむことを妨げない、それをサポートする視覚…それが今回の演出になると思う。だから楽器も見て欲しいし、勿論その音色も楽しんで欲しいし、それから歌ではイタリア語の言葉が生み出す音楽、言葉のリズム感とかを感じて欲しい。舞台は「17世紀の宮廷貴族たちが芝居を演じて楽しむ」という趣向。イタリアで製作する衣裳も楽しみながら、当時の雰囲気を想像して、貴族の気分でご覧ください。
(2007年10月9日(火)17時 鷹羽スタジオにて 聞き手:神奈川県立音楽堂)