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シリーズ「新しい視点」
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Vol.2の採択企画

Vol.2に向けては、15企画の応募があり、その中から、委員長代行・沼野雄司、企画委員・鈴木優人によって、2企画が採択されました。


【採択企画】※順不同

 

・山本昌史/錯綜する《独奏》~Double Triple Solo for Solo Double Bass~

 

 

山本昌史 Masashi YAMAMOTO(コントラバス)

コントラバス奏者。現代作品、即興演奏に意欲的に取り組む。独奏による新たな音楽表現を追求し、バロックから現代までの独奏曲、自作の実験的音楽など、趣向を凝らしたプログラムでソロ公演を展開。

静岡県掛川市出身。東京藝術大学別科修了。2022年9月に行われた独奏コントラバスの現代作品のみの公演は、第22回佐治敬三賞 推薦コンサートに選出され、好評を博す。12月にはポーランド・ワルシャワへ招聘されるなど、活躍の場を広げている。

 

【企画概要】

“自分と楽器だけで何ができるか…”

 

この言葉をテーマに、私は独奏という形にこだわり、現代に作曲された独奏コントラバスのための作品を研究し、演奏してきた。

様々なアイデアを持った作品と向き合い、実験的即興や自作曲を演奏する中で、新たな2つのテーマに突き当たる。

 

“どこまでが独奏なのか?

“演奏するとはどういうことか?

 

演奏者一人?とコントラバス一本?で「独奏」「演奏」の核心に迫る。

 

 

 

・Crossings/Crossings ~ acoustic × fluid ~

 

Crossings

「交差」の意味を持つCrossingsは、作曲家である東俊介、森紀明、映像作家の中村光男、美術家でデザイナーの山田サトシをファウンディング・メンバーとして2018年に設立。

日本を中心とした様々な国や都市をより大きな視点から「一つの地域」として捉え直し、芸術における地域の枠組みの拡大と、ジャンルにとらわれない新たな表現の可能性を示す意欲的な試みと作品発表を行う。

参加者名:中村光男、山田サトシ、東俊介、森紀明

山田 岳 Gaku YAMADA (ギター)

ギターや声、自作楽器を用いたパフォーマンスのほか、演劇、ダンス、インスタレーション制作など広範囲に活動。これまでに第20回朝日現代音楽賞、第75回文化庁芸術祭優秀賞(レコード部門)、第76回文化庁芸術祭大賞(音楽部門)、第21回佐治敬三賞を受賞。レコードレーベル「blue tree」主宰。

安藤 巴 Tomo ANDO(パーカッション)

千葉県柏市出身。東京藝術大学音楽学部器楽科卒業。現代音楽演奏コンクール「競楽」本選出場。第37回日本管打楽器コンクール、パーカッション部門第1位。「トリオ・ループ」「LA SEÑAS」メンバー、「Dropout Jazz Orchestra」リーダー。()こおろぎ社 neoria 契約アーティスト。

 

【企画概要】 

音楽と映像を用いたパフォーマンス。

流体状の素材を使ったライブ・パフォーマンスと、流体からインスピレーションを得つつも演奏家の即興性が発揮される余地を残し作曲された音響素材を組み合わせた、音響素材と映像のコラボレーション。

視覚情報と聴覚情報の間にある共通点と相違点を浮き彫りにした上で、人はどのように音を視覚情報と結び付け、それによりどのように認知が変化するのか。音響と映像を交差させ、舞台上で両者の統合を試みる。

 


【企画委員の講評】

今回の審査は前回以上に難しかった。よく練られた企画が多かっただけに、このプロジェクトが謳う「あたらしさ」とは何なのかについて、あらためて自問しなければいけなかったからだ。直感的な好みとしていえば、斬新なキュレーションと物語構成によってホワイエと舞台を繋ぐ企画、すでに初演されているモノオペラを異なったかたちで見せようとした企画などに惹かれもした。いずれも「新作」ではないものの、新鮮さと安定感が同居しており、一定の水準を必ず越えるように感じたからである。しかし、鈴木優人さんと様々な意見交換をする中で、むしろ、かなり危なっかしい(!)2つの企画を選ぶことになった。考えてみれば、一柳慧委員長ならばまちがいなく「迷ったら危ない橋を渡れ」と仰ったことだろう。

山本さんの「錯綜する《独奏》」は、たった一人だけによる演奏、しかも彼自身の委嘱によるJodlowskiの大曲をメインに据えたうえで、Steen-Andersenと自作を並べる度胸に賭けた。しかし、本当にコントラバスの独奏だけで大丈夫なのか。東さんの「クロッシングス×響き×液体」は多彩なコラボレーションから生まれるであろうケミストリーに賭けた。しかし、なんだか商業コマーシャルみたいになりはしないか。

どちらも、とてつもなく刺激的なものになり得る一方で、退屈な舞台になる可能性も否定できず、その時には企画委員の負けということになるだろう。なんとか勝たせてほしい。

委員長代行 沼野雄司


一柳慧先生が亡くなられ、先生の「遺作」となったこのプロジェクトに再び企画委員として参加させていただき、光栄に思います。多くの応募作品をいただき、沼野先生とともに丁寧に検討させていただきました。

 

全体的な傾向としては、センスの良い構成案のようなものが多い印象で、大変興味を惹かれるものの、それが一柳先生がこのプロジェクトを通して発見したいと願っていた「新しい視点」なのか、というと、そこまで突き抜けたものはあまりない印象でした。またいくつかは創造的なアイデアを提示していたけれども、今度はあまりに具体性に欠き、方向性か手法など、何かあれば、と思ってしまうものも多かったように思います。

 

その中で最終的に選ばれた2案は、実現へのスリルも感じると同時に、このプロジェクトが提示する、「新しい視点」としてふさわしいと判断するに至りました。

 

【山本昌史/錯綜する《独奏》】

既存の作品へ行われる演出がどういったものになるのか、また山本さん自身の新作についても、楽しみにしています。また、コントラバス1台で、どのような世界を切り開くのかというところにも、とても興味を惹かれています。

 

【東 俊介/Crossings × acoustic × fluid -クロッシングス × 響き × 流体 - (仮称)

「流体」を用いたコラボレーションについては、すでに各地で上演されているようなので、少し「新しさ」について懸念はあるものの、映像と音楽をリアルタイムで合わせていくというところで、どのように舞台上のパフォーマンスとして仕上がるのか、興味があります。

 

ワークインプログレスを経て、完成形へと向かうところを是非ご覧いただいて、舞台の作品へと仕上がる過程を共有していただき、「新しい視点」を見出していただけたら幸いです。

委員  鈴木優人

2023年2月28日 第2回 ワークインプログレスの様子:写真(c)ヒダキトモコ

カーテンコールより。2組の企画ユニットのメンバーが勢ぞろい。

 

コントラバス奏者、山本昌史のプレゼンテーション。本公演で演奏する予定の作品について解説。

作曲家ピエール・ジョドロフスキ氏からの熱いビデオメッセージも。

 

「独奏」にこだわって演奏活動を続ける山本は、「独奏」と「独奏+α」の違いを表現するべく、

ワークインプログレス限定で、舞踏家・梅澤妃美と共演。

本公演では、ただ一人で、音楽堂の舞台に挑む。


Crossingsのパフォーマンスの要は、山田サトシが操る不思議な動きの「流体」。

ワークインプログレスでは、磁力でコントロールができる「磁性流体」を使用。

 

山田サトシ(写真左)の「流体」のパフォーマンスがスクリーンに映し出され、

山田岳(写真一番右)・安藤巴(写真右から2番目)が、ギターやさまざまな打楽器などを使用して音楽を奏でる。

 

出演者たちの、「いま」「ここで」行われるパフォーマンス。時に予測不能に、さまざまに変化を見せる「流体」と「音楽」。

本公演では、新たな「流体」の素材や楽器が加わり、さらなる進化を目指す。

 

熱心にコメントする沼野雄司委員(上)と鈴木優人委員(下)


モニター観客のコメント、メッセージから

 

ワークインプログレスでは、モニター観客の皆様から、プレゼンの感想、企画への期待、企画者への激励の声などを書いたモニタリングシートを寄せていただきました。その一部をご紹介します。

 

#1 山本昌史

 

・質疑応答の中でも触れられていましたが、コントラバスという楽器から、あのように様々なバリエーションの音が出るとは知らず、とても面白かったです。

・演奏者の発する音と観客が聴く音の違和感との発想が魅力的。

・コントラバスの使い方(オーケストラでしか見たことがなかったので)、あの大きさでの存在感、斬新でした。

・さまざまな種類と性質の音、声、ダンサーの方の動く時の音も面白く聴きました。事前のプレゼンがわかりやすく、コントラバスという楽器にも、山本さんにも興味がわきました。

・プレゼン自体はわかり易くて良かったです。ドラックマン作品の演奏も山本さんの技量やパフォーマンスの特徴の一側面が見えて良かったです。

・本公演のプログラムの魅力は伝わってきました。面白そうだと思いました。 

・企画者が企画で実現したいことが明確で、理解できた。 

・身体表現に注目したところ、コントラバスの特性を活かす表現が良かった。

・暗く深い音色がすばらしい。聞いていてやすらぎを与えていただきました。

・とても楽しいパフォーマンスをありがとうございました!見たことない演奏のしかたとダンスのコラボ、とても新鮮でした!これからも見たことない驚きのパフォーマンスを期待しています。

・山本さんの声が良いので、発声のある曲をもっと聞きたいと思いました。本公演がんばってください!

・山本さん、がんばってください。コントラバス好きですよ。

・独奏はおもしろさの反面、さみしさもあるかもしれませんが、頑張ってください。

・山本さんというアーティスト自身がおもしろい人だと思う。わが道を進んでほしい。まわりには左右されないで。

・どこまで「独奏」をつきつめられるのか、本番がどうなるのか楽しみです。

・今後もチェックし続けたいアーティスト、パフォーマー、プレーヤーです。がんばってください。7月必ず行きます。

・コンセプトもアイデアもパフォーマンスもとても良かった。ユーモアのある素敵な個性を前面に出して、独走し続けて頂きたいです。応援しております。

 

 

#2 Crossings

 

・「流体」の視覚情報を音にする、というコンセプトがよく伝わった。抽象的な内容が非常に具体的に分かりやすく説明されていた。

・説明やチラシでは良くわからなかったが、見ていて面白かった。

・前半は映像が単調で音も少し耳にさわるなと感じましたが、後半、水中のゴポゴポ音のような感じと深海のうごめくような映像と没入感がよかった。

・液体を舞台上でリアルタイムで調合?実験?している様子が見られるのはおもしろいですね。

・流体はとても楽しかった。音はすごくいろいろな物から奏でられる音は楽しかった。

・沼野さんが質問するまでは「作曲」という準備された仕組みを意識していなかった。ほとんど即興だと思いました。映像の魅力が1番よい!プレゼンもよかったです。

・磁性流体と音が合っているところは、おもしろい。

・今迄ノイズミュージックのようなものを全く理解できなかったのですが、今日は流体とコラボしていて、すごくちょうどよく聞こえました。もっと流体を見てみたいと思いました。驚くぐらい、飽きがきませんでした。

・コンセプト、音・映像のクロッシングが良い。

・後半にいくにつれ、粒立った映像に変わっていくのが気持ち良かった。

・ステキな取り組みですね!無限大の想像力を発揮されてください。今後も楽しみです!いろんなことを試して欲しいです!

・演奏はコンセプトを、映像は想像を超えるものを期待しています。チームの一体感を感じました。

・映像おもしろかったです。ステージもにぎやかでした。コントロールしきれない作品、楽しみにしています。

・いろいろな可能性がまだまだありそうです。期待しています。音を楽しめる流体の動きもどう変化するかも楽しみです。

・いろいろな分野のエキスパートが集まって、新しい芸術の可能性が広がると思う。

・今回のプログラムに限らず、ユニットのコンセプト自体に感動しています。「視覚情報と音を結びつける」コンセプトで、企画の幅がどう拡がるかとても興味がわきます。今回の即興を重んじたパフォーマンスも素晴らしかったが、撮り置いた映像に対して指揮者つきでみっちり作曲しているヴァージョンも創っていただきたいと思えました。いちファンとして今後のご活躍を楽しみにしています。

Vol.1アーカイブ(2022年7月2日開催)

紅葉坂プロジェクトVol.1(2022年7月2日開催)のアーカイブはこちら

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(令和4年度実施分まで)
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(令和5年1月~)
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