募集時のチラシ

シリーズ「新しい視点」<紅葉坂プロジェクト>

ワーク・イン・プログレス(公開プレゼンテーション)

「新しい視点」<紅葉坂プロジェクト>で一般公募により採択された企画をモニター観客の前で実施します。

<紅葉坂プロジェクト>とは
演奏家から聴衆へ発信する音楽表現のあり方、また神奈川県立音楽堂の空間で聴衆がいかに新しい音楽に出会うか、この双方向の可能性を広げるために、新シリーズ「新しい視点」はスタートしました。<紅葉坂プロジェクト>はプロの音楽家を含む一般の方々より公演企画を募集し、審査を経て選ばれた企画は音楽堂のスタッフとディスカッションしながら、一緒に公演準備やプロモーションをおこなっていきます。

審査会にて3つの企画が採択されました!

(五十音順)

企画者: 河村絢音、佐原洸

タイトル:kasane (かさね)~弦楽器と電子音響デザインによるプロジェクト         

河村絢音(ヴァイオリン)、佐原洸(電子音響デザイン)

企画者: ささきしおり

タイトル:ドローイングサウンドパフォーマンス/描線の音楽会

ささきしおり

企画者: 滝千春、中野翔太

タイトル:「音+音」~素の”音の響き”を味わうとともに、360度スピーカーによる音響効果で空間の可能性を広げる

 

滝千春(ヴァイオリン)、中野翔太(ピアノ、ローズ・ピアノ)

 

*ワーク・イン・プログレスの実施詳細については、後日、本ページで発表いたします。

企画員3人の講評を発表いたします。

柳 慧 委員長

 

 今回の応募案は若い世代から、強烈に驚かされるもの、我々の想像を超える様なものが出てくることを期待していたが、「新しい視点」という観点からは全体的に大人しく、やや物足りない印象は否めなかった。そんな中にも良いものはあり、正式採択された3企画は、非常に力の入った企画で、第1回目の「新しい視点」<紅葉坂賞>の企画としてふさわしい。

 結果的に採択企画は電子音響を使った、いわゆる「現代音楽」が多くなったが、応募企画があまり現代音楽モノに傾きすぎると、新鮮味がなくなるのではという危惧も持っている。そうした中でささきさんの案は、バスドラムに絵を描く過程を時間と空間の両面で体験できるサウンドパフォーマンスにしていくというアイデアが斬新で面白い。ささきさんはこれまでも実験精神のあるものに取り組み、その取り組みを仲間とお互いに共有してきている、というところも素晴らしい。

 音楽家による企画の課題としては、どうしてもコンセプトを言語化する言葉の力が充分でない、と感じるものが目についた。面白そうなアイデアでも、何故その曲目が一つのプログラムの中で共存し、異なる音楽ジャンル同士がどのように結びつくのか、といったことが、企画書の言葉からは伝わってこなかったものもある。また、良いプログラム提案でも、企画の成否が突き詰めると演奏の良し悪しで左右されるにもかかわらず、具体的演奏家名が記されていない例もあった。音楽家が企画立案すると、演奏に依存した提案が多くなるのはしかたない傾向ではあるが、音楽の技術だけにとらわれないで発想してほしい。次回からは、あまり演奏することのみに引っ張られない企画が出てくることを期待する。

 ヒントとして、他の芸術分野とのコラボレーションなどもうまく取り込めれば良いと思う。また今回正式採択には至らなかった中で、音楽堂の建築空間を違ったものに見立てる、というユニークな企画があった。既存の空間をヴァーチャルに違うものに見立てていく、といった発想は、その過程で新しい問題意識を生み出すことにもつながってくると思う。

 「自分のコンセプトに基づく企画」ではなく、他の人が創ったものを借用して新しいものを生み出そうとしている人が多かった。若い人は仕方ない部分はあるが、そうした手法は本質的なクリエイションから離れ、疑似的な創造物にとどまる可能性があることにも注意してほしい。

 次回に向け、できる限り自分のコンセプトに基づくものを大事にしてほしい。

 

沼野 雄司 委員

 

 作曲における新しさとは、煎じ詰めれば「素材の新しさ」あるいは「構造の新しさ」に行きつくという説がある。新しい音色を発見するか、新しい音の並べ方を開発するか、というわけである。コンサートの企画もこれに似ている。コンテンツの新しさを求めるか、見せ方の新しさを求めるか。おそらく「新しい視点」はこのいずれかに関わってくるはずだ。

 最終的に選ばれた3企画は、現代音楽(あるいは新作)、そしてテクノロジーに関わるものになった。現代音楽というのは新しいコンテンツであり、そこにテクノロジーを介在させるというのは、新しい見せ方ということになるのだろう。ただし、これら二つの「新しさ」は誰もが容易に思いつく新しさでもある。

 実は、音楽という枠組みの再考を迫るようなコンテンツや、古典派の作品を「新しく」聴かせてくれるような工夫を密かに期待していたのだが、今回は残念ながらそうした企画に出会うことはできなかった。難しい道であることは承知だが、次回に期待したい。

 最終的には選ばれなかったけれども、個人的にはとても惜しいと思った企画もあった。とりわけ、ガラス張りのホワイエという特性を生かして、夕方から夜という光の変化の中で、グリゼーの打楽器アンサンブル作品「黒の星」を演奏するという企画は、体験してみたかった。ぜひ、いつか実現していただきたい。

 

鈴木 優人 委員

 

 「新しい視点」をかかげる本プロジェクトの第1回に、さまざまな視点から、さまざまな意欲的な作品が寄せられたことを嬉しく思います。誰にとっての新しい視点なのか、ということは当然問題になってきますので、そこも含めてこのプロジェクトは手探りで進んでいくのだろうと思いますが、本年はさまざまな観点から、アイデアと意欲と実現可能性のバランスの高い3つの作品が選ばれました。
 電子音響や360度スピーカー、それにライブペインティングの要素を備えた3つの作品が選ばれたわけですが、これらの手法はどれも完全に新しいものかというと、そうではありません。しかし、各奏者、企画書の意欲や、今回のプロジェクトにかけるクリエイティブな情熱を審査員が評価して選ばれたのだと受け止めています。ワーク・イン・プログレスを通して、さらにこれらの作品が深められ、かつより新しい視点をもったものになっていくと期待しています。

 今回残念ながら選にもれた皆さんも、ぜひさらに自由なアイデアで創作活動に励んでいただければ嬉しく思います。このプロジェクトはまた来年も続いていきますので、このプロジェクトの存在自体が新しい視点を持ち続けられるようにあり続けたいと一委員として願っています。

 

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