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主催事業情報 2026/9/1 ファビオ・ビオンディ、《四季》と「イタリアの宝石」を語る(インタビュー)
©Victoria Nazarova
貴族的、文化的なコレッリの流派と、より激しく、嵐のようなヴィヴァルディの対照も聴いていただければ
聞き手・文 加藤浩子(音楽物書き)
1990年代にクラシック音楽界を席巻したファビオ・ビオンディとエウローパ・ガランテのヴィヴァルディ《四季》は、革命的な演奏だった。グルーヴ感と疾走感、イタリア人ならではの歌心と劇場性、古楽系の団体とは思えないカラフルな色彩…。あの衝撃から35年、彼らのレパートリーはロマン派にまで広がっているが、《四季》が今なお彼らの原点であり、活動の軌跡のバロメーターであることは間違いない。
1994年の初来日以来、《四季》は日本においても彼らの看板であり続けている。この秋の来日公演のタイトルは、「《四季》とイタリアの宝石」。《四季》に加えて、イタリア・バロックのヴァイオリン音楽の名曲を選りすぐったプログラムだ。来日を前に、プログラムの意図や現在の活動についてビオンディに話を聞いた。
―《四季》はビオンディさんとエウローパ・ガランテにとってデビュー当時からの十八番ですが、現在までに演奏はどう変化したか教えていただけますか?
ビオンディ(以下B):もちろん当初と今では、演奏は変わって来ています。音楽的な状況も変わったし、自分たちも変わって来ているので。
初めて日本に来た時、音楽大学の学生さんに「なんて速い!」と驚かれましたが、驚かせるのが目的ではなく、考えがあってやっていたことではありました。当時はヴィルトゥオジティを優先する面もありましたが、今はもっと古典的な表現を心がけています。《四季》はパワーと魅力のある作品ですから、演奏の歴史や伝統を考慮しつつ、音楽への忠誠と発見を大事にして取り組んでいることが伝わればと思っています。
―今回はコレッリ、ジェミニアーニ、ロカテッリという、イタリア・バロックのヴァイオリン音楽を代表する作曲家の作品も演奏されます。この三者の関係を教えていただけますか?
B:コレッリはイタリアのヴァイオリン音楽の一つの流派の開祖で、音楽史において大変重要であり、ヨーロッパ中で大成功を収めた音楽家です。中国で1700年にコレッリの作品が演奏されたという記録があるくらいです。ジェミニアーニはコレッリにより近い時代で、ロカテッリはそれに続く存在と言ったらいいでしょうか。コレッリの一派は、貴族的で文化的、上品だと言われます。それに対してヴィヴァルディらヴェネツィア楽派は、より激しく、狂っているようなところがある。この対照も聴いていただければと思って、このようなプログラムにしました。
ジェミニアーニの《ラ・フォリア》は、コレッリへのオマージュと言える作品です。コレッリの最も有名なヴァイオリン・ソナタ《ラ・フォリア》の旋律と、コレッリが完成させた「合奏協奏曲」の形式を合体させているのです。この二つの要素があれば、興行的にも受けますよね。「フォリア」のメロディはスペイン起源ですが、今でいうビートルズの有名曲のようなヒットメロディでした。
ロカテッリは、イタリアのヴァイオリン音楽の歴史においてとても重要な人物です。ユニークで斬新なのです。ヴィルトゥオーゾとして大変有名であり、「ロカテッリ現象」と言われるほど一世を風靡しました。ヴァイオリン奏者にとっては避けて通れない作曲家です。
今回演奏する《劇場風序曲》はとても美しい作品なのですが、あまり演奏の機会がないこともあり、ぜひ知っていただきたいと思ってプログラムに入れました。オペラティックで、ソリストのパートは技術的にも大変高度ですし、オーケストラにも高いクオリティが要求されます。2025年には録音もしています。タイトルからは劇場で演奏された曲のように思われてしまいますが、どういう場面で演奏されたかはわかっていません。オペラのシンフォニアや協奏曲と同じ3楽章構成なのに形式は合奏協奏曲、というのも大変珍しいです。
―最近はロマン派のレパートリーにも熱心に取り組まれていますね。2022年にはメンデルスゾーンの若き日の作品集もリリースされました。メンデルスゾーンはバッハ作品の復興にも取り組んだ人物ですが、彼とバロック音楽の関係も考慮して選ばれたのですか?
B:メンデルスゾーンは、まだバッハの作品がほとんど演奏されていない1800年代に、《マタイ受難曲》の蘇演をはじめバッハ作品の復活に取り組んだ作曲家です。魂はロマン派なのに、バロック音楽を愛していた。この混合が彼の特徴なのです。過去と未来を見据えて作品を作る。そこが魅力です。過去を知り、未来を考えることは表現者にとって重要ですから。
―ビオンディさんご自身の、そしてエウローパ・ガランテとの今後の活動について教えてください。
B:たくさんあります。笑。まずエウローパ・ガランテとは、多くのコンサートと並行して、私が音楽監督をしており、パルマのファルネーゼ宮殿を会場にして開催される「ファルネーゼ・フェスティバル」で、毎年新しい作品を上演しています。例えば去年は、パルマ生まれの作曲家ジョヴァンニ・マリア・カペッリのオペラ《認められなかった兄弟たち》を演奏しました。カストラートの大スターであるファリネッリとカレスティーニが共演した、エポックメーキングな作品です。1728年に初演されたのですが、音楽はとても個性的で、同時代のどの作曲家のオペラにも似ていない。
このフェスティバルで上演したオペラは、「ダ・ヴィンチ」というレーベルからリリースされる予定です。今後はヴェルディの《リゴレット》や、ベルリオーズの《キリストの幼時》なども考えています。
私個人の指揮者としての活動ですが、今取り組んでいるプロジェクトのうち重要なものの一つは、ボローニャの市立劇場が改修を終えて再オープンするのにあたって依頼された《ウリッセの帰還》です。これはモンテヴェルディの同名のオペラを、20世紀イタリアの作曲家ダラピッコラが編曲したものです。モンテヴェルディ作品は声楽パートしか残っていないので、オーケストレーションはダラピッコラが全てやりました。音楽のスタイルとしては完全に20世紀のものですが、とても素晴らしい作品です。またナポリのダンカルロ劇場では、パイジェッロのオペラ《ニーナ》を指揮します。
私は、ファシズムの影響もあって忘れられていた20世紀のイタリア音楽にスポットを当てたいと思っています。レスピーギ、ピツェッティ、カゼッラ、マリピエッロ、そしてダラピッコラといった作曲家たちですね。音楽史における彼らの重要性はもっと認められるべきだと思っています。
音楽堂ヘリテージ・コンサート
ファビオ・ビオンディ&エウローパ・ガランテ
―「四季」とイタリアの宝石―
神奈川県立音楽堂・アクロス福岡・ハーモニーホールふくい 連携事業
2026年11月6日(金) 19:00開演
神奈川県立音楽堂
コレッリ:合奏協奏曲 第4番 ニ長調
ジェミニアーニ:合奏協奏曲 第12番 ニ短調「ラ・フォリア」
ロカテッリ:6つの劇場風序曲より 第1番 ニ長調、第4番 ト長調
ヴィヴァルディ:「四季」全曲(ヴァイオリン協奏曲集「和声と創意の試み」より)
全席指定・税込 一般7,800円 ほか(発売中)
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